30代になる息子さん二人を、これまでシングルで育ててきた、山梨県在住の加藤香さん。学校の行事には出来るだけ参加して、子どもの成長を見守る環境を最優先に選択してきました。現在は、NPO法人bond place※1の理事を務めながら、子育てや介護、障がいなど、なにかしらの働きにくさを抱えた方たちと共に働く、経理事務を中心とした在宅ワークの会社(icchi有限会社)を立ち上げました。
身近な人の困りごとを助けたいという気持ちが、人一倍強い加藤さん。2011年3月11日、息子さんの下宿先を探すため、親子で東京に来ていた際、東日本大震災に遭ったことをきっかけに、これからは地域のために自分ができることを本格的にやっていこうと決意を固めました。
最初に始めたのは、生まれ育った環境や性別によって選択肢が理不尽に制限された環境にいる子どもたちのこと。子どもの居場所づくりとしての学習支援を、始めはボランティアで、今は行政の委託を受け取り組んでいます。同時期に、女性やNPOの方たちの起業を応援する、コワーキングスペース事業を始めました。
もともと小さな商いの経験はありましたが、パートナーと事業を大きくする仕組みを勉強するため、グラミン日本のワークショップに応募しました。最初に感じたのは、「何でも肯定してくれて楽しい!」こと。一般的な起業支援のワークショップでは、例えば事業計画書作成であれば、経験・資金力・営利が第一主義の売上目標しか書くことができない。女性が大切にしている価値観を表す箇所がほぼなかったのです。一方、グラミン日本では、加藤さんの事業の夢を膨らましたり情報を与えたりと、話を肯定的に捉えるのが印象的だったそうです。
ワークショップ後、加藤さんは、同じように起業を目指す5人一組の互助グループで起業を具体化していきました。これまで生きてきた背景の違う方々とも積極的に交わろうとする加藤さんは、センターマネージャー※2から「加藤さんがチャレンジしてみたい事業(働きたいのに働きにくい状況にいる方たちを活用した業務代行ビジネス)を、すでに実践している人がいらっしゃるよ」と聞き、センターマネージャーに背中を押されながらその人に会うために沖縄を訪れてしまうほど、行動力がずば抜けています。
「家族のことや仕事のこと。普通の起業セミナーや銀行では最初から本音や自分の背景を話せない。でもグラミン日本では弱音も話すことができる。社会人と母親の狭間にある葛藤の話も、グラミン日本は見守ってくれる。その環境が心地よかったです。また、グラミン日本はお互いの話を聞きながら、より良いものを作っていこうと同じ目線で取り組む同期の仲間が全国にいるのが良かった」と話してくれました。
今後興味あることは、ソーシャルビジネスを始めた女性たちと、その女性たちを支えるバックオフィス人財のマッチングです。仕事をつくるのではなく、働く価値を作りたいと言います。働いている人がスキルアップやメンタルセルフケアができる。弱いままでも働くことのできるチームを作ろうと、事業を始める前に丁寧に作り込んできました。
加藤香さんの、選択肢のない身近な人を支えあいたいという思い、グラミン日本という安心安全の場所、そして女性だからこそ抱える環境の3つが相まって、大きな可能性が生まれつつあります。
※1 NPO法人bond placeは、生活困窮の子どもたちの学習支援や居場所づくりをおこなっている団体。https://www.bondplace.org
※2 センターマネージャーは、5人一組の互助グループをフォローアップするグラミン日本のスタッフのこと。
加藤さんが立ち上げる経理事務代行サービス
↓↓加藤さんが参加した、グラミン日本のワークショップは、オンラインで毎月開催中!↓↓