poverty日本の貧困が生まれる構造的課題

日本の母子世帯の『経済的な困難』や『時間のゆとりのなさ』はなぜ生まれるのでしょうか?データやジェンダー格差の視点から、構造的な問題を分かりやすく解説します。

日本にもある貧困、経済的ハードルが圧倒的に高い母子世帯

国や地域の中で、大多数よりも貧しい状態を指す「相対的貧困」をご存じでしょうか?(注1)
厚生労働省の「2025年 国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率は15%に達しています(注2)。
つまり日本の約7人に1人が貧困ライン以下での生活をしていると考えられます。
この調査では、世帯人員1人あたりの可処分所得が138万円以下というのが相対的貧困の基準です。

約7人に1人が相対的貧困にある

相対的貧困

注1:OECD(経済協力開発機構)によると、相対的貧困とは「世帯の所得がその国の等価可処分所得(手取り収入を世帯人数の平方根で割って調整した額)の中央値の半分(貧困線)に満たない人々の割合」と定義されています。

注2:厚生労働省2026年7月「2025年国民生活基礎調査」

なかでも母子世帯は、貧困に陥っている割合が圧倒的に高いのです。
たとえば、中学2年生の子供を持つ約2700世帯を対象に内閣府が行った調査「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」(注3)によると、 等価世帯収入が中央値の2分の1未満の世帯は、対象者全体だと12.9%だったのに対し、母子世帯に絞ると54.4%に急上昇します。
なお等価世帯収入が中央値の2分の1未満というのは、大多数の世帯よりも生活のゆとりを持ちにくい状態を表しています。

母子世帯は特に経済的に厳しい

母子家庭の困窮割合

注3:内閣府「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」23ページ

       

ジェンダーギャップが引き起こす経済的リスク

日本では男女の賃金に大きな格差があります。同じひとり親の世帯でも、母子世帯と父子世帯では世帯年収に2倍近い開きがあります。

正規職員としての勤務割合は、女性の方が低い傾向にあります。

同じひとり親でも性別で収入に開き

日本の男女賃金に大きな格差
出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果」概要1ページ

ひとり親世帯に限らず、日本は近隣の国や地域と比べても、男女の賃金格差が大きくなっています。

日本は男女の賃金格差が大きい

近隣諸国と比べても男女の賃金格差が大きい日本
笹川平和財団「新しい男性の役割に関する調査報告書-男女共同参画(ジェンダー平等)社会に向けてー」資料2 東アジア5都市統計分析レポート 3~4ページを基にグラミン日本作成
参照:内閣府「令和2年版男女共同参画白書(概要)」

こうした格差はなぜ生まれてしまうのでしょうか?
「家事や育児は女性の役割」とする「固定概念」が原因の一つだと私たちは考えています。

仕事との両立をあきらめざるをえず、正規雇用から非正規雇用に働き方を見直したり、退職をしたりするのは多くが女性です。また、仮に正規雇用を継続したとしても、子育てで時短勤務になるなどして実質的にキャリア形成が難しくなることもあります。

結果として、結婚をしていたとしても男女の間には大きな賃金格差が存在し続け、シングルマザーの過酷な経済的リスクの高さにつながっていると考えています。

離婚に伴い、いざ就職しようとしても、

・企業が望む能力や経験が不足している
・家庭を理由に仕事に穴をあけられるのは困る

そうした考えが主流の一般的な採用制度のもとで、彼女たちが苦戦するのは言うまでもありません。

ジェンダーギャップを引き起こす構図

日本のジェンダーバイアスを引き起こす社会的構造がある

家庭にも仕事にも一人で責任を負うシングルマザーは、時間的な制約も大きくなりがちです。もっと働きたくても、キャリアアップしたくても、それがしにくい構造的問題があると考えています。

スキルアップしたくても難しい

日本の相対的貧困率は、他の先進国と比べて高い

子供への影響、社会の損失

母子世帯では、貧困の連鎖が生まれる可能性も高まります。
習い事や塾に行く金銭的余裕がない、進学費用が用意できないなど、子供が教育や学歴を得る機会が狭まりがちだからです。

たとえば高校等を卒業したあとの進学率には、ひとり親世帯と全体では、以下のような差があります。

高校等卒業後の進学率

高校卒業後の進学率は、全体平均以下
出典:子ども家庭庁「こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について」26ページ
注:ひとり親家庭と全世帯の数値の算出方法が異なることに留意

また、これまで繰り返し述べてきた”金銭的な問題”に限らず、母子世帯では家事や育児にかけられる時間も少なくなります。
「子供と向き合う時間が取れなくてつらい」
「子育ても仕事も中途半端で、自分を責めてしまう」
このような声が、グラミン日本が関わってきたシングルマザーからは度々聞こえてきています。

たとえば6歳未満の子供を持つ女性への調査ではシングルマザーは専業主婦の約5割、共働き女性の約7割しか家事・育児に対する時間を割けていません。

ひとり親は育児に割ける時間が少ない

シングルマザーは、子供と向き合う時間が少ない
出典:内閣府「令和5年版 男女共同参画白書」(概要版)19ページを基にグラミン日本作成
(備考)1.総務省「社会生活基本調査」より作成。 2.「専業主婦」は、夫が有業で妻が無業の世帯。「共働き」は、夫が有業で妻も有業(共働き)の世帯。

シングルマザーが直面する構造的な困難は、社会全体の損失にもつながると私たちは感じています。

本来は貴重な人材である彼女たちが、十分に力を発揮できないことは、企業の損失、それに伴う税収の減少や社会保障費の増加、地域経済の縮小などさまざまな負の影響を生み出すことが考えられます。
長時間労働がしにくく、企業が求めるキャリアが現時点では無いとしても、能力がないわけではありません。
ほんの少しの後押しと応援で、彼女たちの能力が発揮される可能性はいくらでもあるはずです。

私たちグラミン日本は、経済的な不安や時間のなさと闘いながらも前を向くシングルマザーへ
・就労につながるスキルを学ぶ機会
・スキル生かし実務経験を積む場
・起業を具体化していく場
・就労や起業を目的とした少額融資
・同じ境遇の仲間とのつながりの場
など、さまざまな後押しをしています。

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