「落ちたら、上がるだけ」。シングルマザーが掴んだ、希望の光

鈴木 千鶴 さん

子育て、仕事、そして自身の病気。多くの困難に直面しながらも、前向きな姿勢で人生を切り開いてきたシングルマザーの鈴木千鶴さん。グラミン日本のマイクロファイナンスを通じて、彼女はどのようにして新たな生き方を見出し、自己実現の道を歩み始めたのでしょうか。

経済的な困窮と病との闘い

保育士として働き、小学生の息子さんとお母さまと3人で暮らしていた鈴木さん。しかし、今から約8年前に全身の倦怠感、身体が動かなくなる、微熱が続く、などの原因不明の病気を患い、3年間の寝たきり生活を余儀なくされました。その後、幸いにも日常生活が送れるまでに回復しましたが、疲れやすくなったり集中力低下などの後遺症は続き、体力が必要な保育士のフルタイム勤務は困難になったのです。「特に3年間の寝たきり生活の間は収入がゼロになり、将来への不安でいっぱいでした」と鈴木さんは振り返ります 。

そんな中、鈴木さんは、シングルマザー支援団体「ハートフルファミリー」の存在を知り、食料支援などを利用するようになりました。さらに、同団体が企画した、起業を目指すシングルマザーを対象とした「555日のチャレンジ」という1年半にわたる職業訓練プログラムへの参加を決意したのです。病気による収入減と、もし自分に何かあったら息子さんがどうなるかという不安・・・「このままではいけない、変わりたい」という強い思いが、鈴木さんのチャレンジを後押ししました。

新しい挑戦とグラミン日本との出会い

555日のチャレンジ」は、Webライティングやデジタルリテラシーといった、体力的な負担が少なく、自宅でできるスキルを身につけるためのものでした。しかし、プログラムの受講には、それなりの費用がかかります。「自分の収入で、受講料を払えるのか」という新たな壁に直面した時、このプログラムの資金分配団体であるグラミン日本の存在を知ります。 そこで、シングルマザーでも融資を受けられるマイクロファイナンスという制度に出会ったのです。

「私のような状況でも融資を受けられるのだろうか?」という不安はありましたが、それでも鈴木さんは「新しいスキルを身につけ、自立した未来を築きたい」という覚悟を胸に、プログラム参加費用を借りることを決断しました。この一歩が、彼女の人生を大きく変えるきっかけとなったのです。

仲間との絆がくれた大きな変化

融資を受けた鈴木さんが、職業訓練プログラムと並行して参加することになったのが、グラミン日本の5人組のグループ活動(センターミーティング)です。これは、グラミン日本で融資を受けたシングルマザーが5人集まり、隔週のオンラインミーティングの中で、各自の自立に向けた取り組みを共有しあうものです。鈴木さんは、最初は「何を話したらいいんだろう」と戸惑いがあったそうですが、回を重ねるうちにメンバーの近況や、頑張る姿に刺激を受け、毎週のミーティングが楽しみになったと言います 。
ミーティングでは、受講中の職業訓練プログラムや各自の仕事の話だけでなく、子育ての悩みも共有するようになり「シングルマザーにしかわからない悩み」を分かち合える仲間ができたことが、彼女にとって大きな支えとなりました 。

特に印象的だったのは、鈴木さんが精神的に追い詰められ、本当に苦しかった時、あるメンバーがかけてくれた「落ちたら、上がるだけ」という言葉です。普通の状態なら何気なく聞き流してしまう一言だったかもしれませんが、不思議と鈴木さんの心にすっと染み込みました。
「そうか。落ちても、また上がっていけるんだ」。ーーーその言葉は、今でも鈴木さんが落ち込んだ時に、上を向いて歩き始める原動力となっています。
センターミーティングで出会ったシングルマザーの仲間たちとは、今も直接会ったり、悩みを相談しあったりと、大切な関係を築いています。

息子さんの成長と、未来への挑戦

「555日のチャレンジ」と融資の返済を無事終了ししたことで、鈴木さんは「やればできる」という自信がつきました。そして現在、保育士の仕事と並行してライターの仕事を受注できるようになりました 。「今度、私が編集にかかわった本が出るんですが、そこにはじめて、私の名前も載るんですよ」と、鈴木さんは嬉しそうに語ってくれました。
そして鈴木さん自身だけでなく、息子さんにも嬉しい変化がありました 。以前は鈴木さんにべったりだった息子さんが、勉強する母の姿を見て、「今日は勉強だから1人で遊んでてね」と言うと、部屋に入らないようにするなど、自立心を持つようになったそうです 。


グラミン日本のセンターミーティングを通じてコミュニティを持つことの大切さを知った鈴木さんは、昨年、発達特性をもつ子どもとその家族が安心して集える場所として、コミュニティ「Rainbow🌈 Wish Home(レインボーウィッシュホーム)」を立ち上げました 。

Rainbow🌈 Wish Homeのロゴ

それまで地域に存在していた、特別支援学級(特支学級)の保護者の会が活動を終了することになり、家族同士の繋がりがなくなるという時、知人から「鈴木さん、なんとかならない?」と声をかけられたのが、立ち上げのきっかけ。今は、月1~2回の保護者同士のおしゃべり会と、月1回、子ども食堂を開催しています。

当面の目標は、自身の収入を安定させることと、立ち上げたコミュニティをNPO法人化して活動を広げていくこと。そのため、再度グラミン日本のマイクロファイナンスを利用して、Webデザイン系の勉強も始める計画を立てました。

「このままではいけない。変わりたい」という一心で、小さな一歩を踏み出した鈴木さんの挑戦は、わずか数年で、確実に彼女の人生を変えつつあります。
困難な状況に立ち向かい、自分らしい未来を切り開くための第一歩を踏み出したいと考えている方にむけて、「グラミン日本では、融資を借りるという以上の、気づきや得るものがある。」と鈴木さんは語ってくれました。

鈴木さんが参加したグラミン日本のプログラムはこちら↓。ぜひお気軽にお問い合わせください。