「イラストで食べていく」決心をさせた一言

たまひろみ さん

色鉛筆やパステルを使用した、見る人の心がほぐれるような絵を得意とするイラストレーターの碧ひろみさん。企業、行政、NPO法人といった幅広いクライアントの依頼を受けて、パンフレットやフライヤーのイラストやデザイン、ロゴマークデザインなどを手がけています。

グラミン日本のイベントに参加したのは、離婚が決まった後のことでした。それまでもイラストレーターとして仕事をしていましたが、十分な利益が出ず、離婚後の生活に不安を抱いていたと言います。
「営業が苦手で、どうやってクライアントを獲得すればいいかわからずに、中途半端な気持ちで仕事を続けていました。『稼げない、お金がない』が口癖になっていたほどです」

日本シングルマザー支援協会の紹介でグラミン日本と出会った碧さんは、1人のサポーターからこんな声をかけられます。
「イラストで食べていくって、自分自身が思っていないよね?」

突きつけられた問いは、まさに核心を突いたものでした。
その一言でイラストレーターとして生きていく覚悟を決めた碧さんは、起業を成功させるうえで欠かせないマインドセット、確実に仕事を獲得していくためのセルフブランディングやSNSマーケティングの方法などを貪欲に吸収していきます。

グラミン日本から融資を受けて立ち上げたのは、アロマセラピーや心理カウンセリングの知識を生かした「遺し絵」サービス。イラストで遺影を描いてほしいという注文はそれまでにも何度か受けていましたが、これを事業として展開することを決めたのです。

終活のために自分でオーダーする人、大切な人を失った遺族の方、家族同然のペットを亡くした人など、注文者にはそれぞれの思いと事情があります。その思いに応えるべく、碧さんは誠実に仕事に向き合います。

時にはアロマオイルの力も借りながら、モデルになる方の表情を生き生きと描く「遺し絵」には写真にはない優しさが溢れ、見る人の心をつかんで離しません。

離婚という大きな変化を迎えるタイミングで自分自身を見つめ直し、力強い一歩を踏み出した碧さん。今、その手から生み出されるイラストやデザインが、誰かの心を癒し、前を向く力になっています。